『かんなぎ』〜アニメからはうかがい知れない世界
こんにちは。tyokorataです。
人は生きている限り、人と接して生きていきます。それはたとえ、どれほど苦しくても、人は自分を変えない限り苦痛は続きます。
『かんなぎ』は、作品がアニメ化されて、話題をさらい、中傷に遭いました。
そうしたネガティブな事を平気で行えるのも、人間です。
『かんなぎ』は表面上はハーレム系ラブコメ漫画の体裁を取っていますが、物語が佳境に入るにつれ、真の姿を見せていこうとします。
それは、嫌な自分からの脱却です。
- 作者: 武梨えり
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/08/09
- メディア: コミック
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五巻のメインの話は、ざんげちゃんが取り付いている涼城白亜の物語です。
『かんなぎ』の五巻には読みきりの『モーリー』という死神のお話があります。白亜の話はその読みきりの話を膨らませたものです。
涼城白亜は幼い頃から霊や穢れを見る事が出来る少女で、その能力ゆえに取り憑かれやすい体質でした。取り憑いた霊はエクソシストのリンダ・ブレアよろしく奇矯な言動をとり、白亜を追い詰めます。
「どうせお前も母親同様じきに死ぬのさ、誰も救ってはくれない!」
「(学校の同級生の男子に向かって)小僧、ワシの体に欲情したのか? 私の体を試してみてもいいんだぞ?」
そのため、友人とも付き合えず、世間から隔離された日々を送っていました。
また、白亜の話を信じない、世間体を重んじる強圧的な父親にも絶望していました。
そして、自分の事を誰も助けに来ない塔の中のお姫様と思い、絶望した白亜は自殺を試みようとします。
そこをざんげちゃんに救われ(?)ます。
ざんげの持つ神性で、今まで灰色だった白亜の人生は一変します。
強圧的だった父親に間接的に反発したり、念願の友人が出来たり。
しかし、そんな白亜の甘えをざんげに指摘されます。
「貴女、幸せが天から降ってくるのを待ってるだけなんだわ」
「貴女って、「不幸な私」が好きなんだわ」
そして、
「もしかして、自分の事を「閉じ込められたお姫様!」とかおもってたんじゃない?」と核心を突かれます。
この後の独白が五巻の肝となります。
「こんな自分で良いなんて思った事一度もない……」
「何もしなかったのは私」
この独白の後に白亜に”ざんげ”の救いが訪れますが、まだまだ白亜の戦いは始まったばかりです。
上記した『モーリー』は読みきりの性質上テーマの完遂が行われますが、白亜の物語と比較しながら読むと、実に面白いです。
「貴女、幸せが天から降ってくるのを待ってるだけなんだわ」
「貴女って、「不幸な私」が好きなんだわ」
恋愛から逃げている私には痛い台詞でした。