アイデンティティー

こんにちは。kaizenaiです。
クロスジャンルの紹介ということで、手始めにちょっと軽めのものを紹介をしてみようと思います。

何年か前に(たぶんごく一部で)話題になった映画なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
実はこの映画、映画で扱うには極めて難しい(それゆえに希少な)「本格」のミステリなのです。
大雨で閉ざされたモーテル、そこで起こる連続殺人・・・といった正統派のクローズドサークルを扱いながら、中盤以降の展開は狭義の本格というより、いわゆる変格、あるいはメタミステリといった言葉を使うほうがいいかもしれません。
それゆえ、どちらかといえば万人にオススメという映画ではなく、人によっては「なんだよこの超展開」といった感じで釈然としない感想を持つ人もいるのではないかと思います。
しかしその根底にあるものは、紛れも無く「本格」の魂です。というか、本格という言葉に一家言のある人にこそ見てほしい、試金石となる映画なのではないかと思います。
例えば、最終的に明らかにされる犯人。初見の時点での私の感想は「なんでこいつやねん。奇をてらいすぎとちゃうんか」というものでした。
しかし、映画も終わってスタッフロールを眺めるうち、犯人も持つ「意味」に気づいて思わず戦慄しました。奇をてらったどころか、映画のテーマや構成からしてその犯人でしか「ありえない」のです。つまりこの映画は変格の形をとりながら、その芯に極めてシンプルかつ挑戦的なフダリット(犯人探し)を織り込んだ「正統派」の本格ミステリなのです。
最近はもうすっかり「本格」とか「ミステリ」なんてジャンルは下火になっちゃいましたが、もしあなたが「本格ミステリ」を好きだという意識があるなら、是非この映画を見てください。きっと損はしないと思います。