熊倉隆敏『もっけ』

はじめまして、fruiskukuruと申します。
今回は、めでたく完結記念の意味も込めて、『もっけ』を紹介させて下さい。

もっけ(勿怪) 1 アフタヌーンKC

もっけ(勿怪) 1 アフタヌーンKC


「奴らは居ンのが当たり前ェ」

との帯が、最終巻に勢い良く巻かれている『奴ら』とは?
察しの良い方には題名でピンと来るかもしれませんが、勿怪、物の怪、平たく言えば妖怪のことです。


民俗学柳田國男鳥山石燕のキーワードにキュンと来たら、一読の価値があります。
逆に、妖怪=水木しげるの方だと、少し肩透かしをくらわれるかも知れません。


物語の主人公は、表紙に描かれている二人の姉妹。
彼女たちは親元を離れ、拝み師の祖父のもとで暮らしているのですが、その理由は、

中学二年生の姉は、『もっけ』が見えてしまう。
小学五年生の妹は、『もっけ』に憑かれやすい。

まぁ、この設定を逆方向に活かすと簡単にバトル漫画になってしまいそうですが、この物語は基本、二人の少女の成長をテーマに進んでいきます。
日常的に『もっけ』と遭遇してしまう彼女たちにとって、『もっけ』に遭うのは、病気にかかるのと同じくらいの不幸でしかありません。
同級生とは共有できない特異体質を抱えながら、頻発する『もっけ』との遭遇をどう解決していくのか。
『見える』『憑かれる』という以外に何の戦闘力もない普通の少女たちは、祖父の助言を受けながら、少しずつ、『もっけ』との付き合い方を覚えていきます。


「奴らは居ンのが当たり前ェ」だから、退治なんて問題外。
しかし、放っておいたら病気が悪化するように、『もっけ』に憑かれたら、時に命に関わる危険すら。

物静かで文学少女な姉と、元気だけが取り得の普通の妹が織り成す、ひょっとしたらあなたの身にも起こりうる妖怪物語。

・突然、道の真ん中で死ぬほどの空腹に襲われて一歩も動けない。
・いきなり、何もない平地でつまづいて派手に転んで動けない。

なんていう状況に、もし今後遭遇したら……本書を読んでいれば、助かるかも?

あ、黒髪ストレートなオドオド系文学少女、という部分に単純に萌えるだけでも、十分本書は楽しめますのでご安心を。
基本、すっごく地味なんですけどね。