とよ田みのる 『ラブロマ』
長梅雨、台風、大地震と、何気に天災被害の多かったこの夏、ノリピー騒動で誤魔化されている間に衆院選も終わってしまい、結局民主圧勝かよ、大衆は本当にマスコミに操作されすぎやな! な今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、fruitskukuruです。
さて今回は、そんな欲望と汚職と既得権益にまみれた汚い世界なんてどうでもいいから、心洗われるような真っ白な物語に救われたい、という気分に、この一作。
- 作者: とよ田みのる
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12/22
- メディア: コミック
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青春であるっ!
とにかく青さがここにある。もう、その青さにキュンと来たっ! と汚れに汚れた己の心が掻き乱されるほどの青さがこの作品には詰まっている。
「根岸さん好きです。俺と付き合って下さい」
第一話の第一声がこれである。
そう、この作品は、二人の男女が出会って、嬉し恥ずかしドキドキ経過を経て、最後にゴールインして大団円という王道ではない。
主人公である星野君の一言から幕を上げる物語は、二人の男女が付き合っていく過程を描いていく。
結婚はゴールじゃなくてスタートだ、というのが祝辞の定番なら、告白だってゴールじゃなくてスタートだ。
ましてや、それまで交際経験のなかった星野君と根岸さんにとって、二人でこれから進む道行は、月明かりすらない夜道に等しい。
なのに! なのにである!
二人は臆することなく、その夜道を爆走する。
思ったことを口にしあい、それぞれの思いの違いを怖がったりせず、誰に何と言われようと、二人は『ふたり』を築いていく。
疑問を疑問のままにせず、とことん納得いくまで語り合わないと気がすまないA型の星野君。
計画性なんてどこ吹く風、感性と突っ込みと時に暴力でそんな星野君の悩みを吹き飛ばすB型の根岸さん。
二人はまったく違う人間である。
星野君の、衆人環視の中でも関係なく告白してしまう歯に衣着せない言動が、根岸さんには分からない。
普通なら、「なにこの男、きもい」なんて一蹴されそうなものだが、そんな攻略難度の高い星野君に対して、全力で立ち向かっていくのが、男らしさフルスロットルの根岸さんだ。
と、ツラツラと語っても仕方がない。
この作品の妙は、とにかく、その会話の面白さにある。
本音の男の子と女の子がぶつかり合ったとき、思っていても言えない本音(たとえば思春期の性の悩みだとか)を、それでも言い合える相手がいる幸せを、是非、ふたりからお裾分けしてもらって欲しい。
恋愛漫画であるけれど、そこにドロドロの展開を求める人には絶対不向き。
読むだけで血をサラサラにされるような爽やかさに満ちた、読み手の清さが試される物語だ。
現実は確かに汚い。夢語る若者に「現実を直視しろ」と説教する大人の気持ちも良く分かる。
だからこそ、高らかに、反撃の声をあげてもいいのだ。「夢を語って何が悪い」と。「努力する姿勢は尊い」と。
恋に恋していた懐かしい気分を思い出したいときに、是非。
あらゆる社会通念を突き破る、『若さ』と『パワー』の漲りが、そこに。
いや、もう、とにかくかわいいんで、だれもみてないところで、ニヘリとしてください。