日本橋ヨヲコ『少女ファイト』

 こんばんは、はじめまして。mokuhaと申します。初めての記事で緊張気味ですが、「少女ファイト」を紹介させて頂きたいと思います。

少女ファイト(1) (KCデラックス)

少女ファイト(1) (KCデラックス)

 本作はバレーにとり憑かれた天才少女と、彼女をとりまく人々の群像劇です。連載中の作品で、あらすじに軽く触れているので「これから読むぞー」と思っておられる方はご注意ください。
 皆さんは天才というとどんなイメージを持たれるでしょうか。自らの進む道のためには犠牲をいとわず、膨大なエネルギーで周囲を巻き込んでいく……天才=エゴイストの図式も頭をよぎるかもしれません。
少女ファイトの主人公・大石練は、自分のプレーの個性をなくし、調和を願う、少し変わったタイプの天才アタッカーです。
 練は小学生時代、チームを全国準優勝まで導いた実力の持ち主です。優れたバレープレーヤーであった姉・真理の死が、練を狂おしいほどバレーへ駆り立てます。鬼気迫るプレーに、ついたあだ名が「狂犬」。しかしチームメイトとの確執がトラウマとなり、バレーに夢中になるあまり、人を傷つける自分を極端に恐れるようになります。
1巻中盤、降りしきる雨のなか、姉の墓前で

私もそっちへ行きたいよ!

と泣き崩れ、後のコーチ・陣内笛子に

雑だな。生き方が雑だと言ったんだ。
そのままではいつか自分に殺されるぞ。

忠告を受ける練はまさにどん底。主人公をここまで堕とすの!?と若干引いてしまいますが、物語はここからです。

少女ファイト(2) (KCデラックス)

少女ファイト(2) (KCデラックス)

 もう一人の主人公ともいえる小田切学は元いじめられっ子ですが、練のある一言に救われて以来、ずっと彼女に憧れています。一念発起し高校からバレーを始める学は

あっあのっ。すいませんっ。手の組み方ってこうですか!?

から始まる超初心者。しかし、呑み込みの早さと高いメンタリティを持った少女です。
 今作では練が学と出会い、幼なじみやチームメイトの助けを得て、バレーの楽しさ、人との繋がりを再発見していく様子が丁寧に描かれています。どんなトラウマを負っていても、人はまた歩き出せる……、作者の前向きな、でも決して薄くはないメッセージが聞えてくるかのようです。
 そして、群像劇というだけあって、練の周囲の人々も魅力的です。守護神のようなカリスマ性と高度な技術を持ちながらも、喘息のため短時間しかプレーできないセッター、犬神鏡子。真理の死に深く責任を感じ、恋愛すら自らに禁じる喪服のコーチ、陣内笛子。などなど個性的なキャラクターがずらりとそろっています。
 また、今の段階では狂犬モードをほぼ封印している練ですが、今後、自らの天才性とどう折り合いをつけていくのかも目が離せません。
熱い成長物語がお好きな方はぜひ!